週末の土曜日の夜、自分たちは北の県境にある茶猫山に来た。ここには
牧場があり、広々とした草原が広がっている。こんな夜はうきうきして
仕方がない。青いレオタードの女の子姿でボロい車を走らせる。途中、
警察の車とすれ違ったが、何もなくてひやひやした。
（あまり無茶しないでよ。免許証の姿と違うんだから。）
「。。。ちょっとやばかった。シートベルトはしているし、大丈夫だと
思ったけれど免許証の写真ね。。。」
レオタード姿で運転しているだけでも萌える。。。いっぺんやってみた
かったし。。。今日はランタン型の照明４つとＣＤプレーヤー、高感度
ビデオカメラを持ってきた。
（見つからないように気をつけてよ。。。目立つし。。。）
「大丈夫だよ。動物に変身した感覚で確かめるから。」
到着した場所は見るからに闇の中に広がる草原だけど、車のライトを消すと
月の明かりが綺麗に差し込んで、黒い山をバックに薄明るくて綺麗な草原が
広がっていた。
「さあ、始めようか？」
（そうね。わくわくするね！）
４つのランタンを踊る四方に置いて、高感度ビデオカメラを目の前の中央に
据える。そしてＣＤプレーヤーをセットして準備すると、自分とアオレちゃんは
一呼吸して気持ちを整える。
「いくよー！ バク転の操縦頼むね。」
（アイアイサー！）
”ドビュッシー 月の光” （曲と一緒にお楽しみ下さい。）
（タターターン、タタター。）ゆっくり中央で手を操り、ポーズをつけながら
一回転。連続して歩き回ってポーズをつけて、ぐるぐる回りながら元の場所に
戻って手を下に広げる。
（タタターターンターン、タタター。）またとことこ歩いてジャンプして、また
ジャンプしてとことこ歩く。端まで来たので中央へ走って大きくバク転して空中で
ひねって着地する。そして立ち止まる。青いレオタードを消し去って裸に。
（タン、タタタタ、タタタタ、タタタン。）ぴくぴく、ぎゅー、ぴくぴく、
ぎゅー。耳が上に移動して猫の耳に。尻尾がにょろにょろ伸びて長い尻尾に。
口元や体つきが猫らしくなり、茶トラ猫の少女になった自分はゆっくり回転して
その場で踊って見せて、小走りに走ってジャンプして、端まで来たので中央に
走ってひねりながらバク転して、ひねりながらバク転して、バク転して、着地して
一回転。
（ターン、タンタン、ターン）海を泳ぐようなメロディーに、ゆっくり回転して
いきながらジャンプして、ゆっくり回転してジャンプして、徐々に、毛並みを
白い犬毛に変えていき、耳から口元、おっぱいから尻尾、足に至るまで柴犬少女に
変えていき、犬のようにとことこ四方に走りながらジャンプを繰り返す。途中、
四つ足で歩き回り始め、体のサイズを犬の大きさにしてしまい。完全に白い柴犬に
なった自分は走りながら出来るだけ高く飛び上がり、端まで走るとぐるぐる囲う
ように四方からゆっくりかけていく。
（ターン、タンタン、ターン。）深い海を潜るようなメロディーに、柴犬になった
自分の体がむくむく大きくなり始め、スラっとした四本足になり、首がスラっと
伸びてきて、可愛い耳からおっぱいから尻尾や足まで茶色のメス鹿になってしまうと、
中央の真ん中でぴょんぴょん跳ねて遊んでしまう。
（タン、ターター、タタタン）落ち着きを取り戻し、首を短くし、上半身から
人間に戻っていき二本足で立つと、耳がぴょこんと立って頭の上に移動し、
黄色いキツネ毛が生えてきて、口元からおっぱいから、尻尾からつま先まで
キツネ少女になる。月明かりの中を散歩するように跳ねる。端まで跳ねていくと、
中央に向かって走ってバク転。
（タタタ、ターン、ターン）そして耳が両側に移動しキツネ毛が消えて、
体つきも人間の女の子の一糸まとわぬ姿に戻って、一回転。右にポーズをつけ、
左にポーズをつけ、真上に両手を伸ばしポーズをつけ、端に向かって走って
ひねりながらバク転、中央に向かって走りながらひねってバク転。座って空を
ゆっくり仰ぎながら、人魚の青い魚尻尾を空の月明かりにかざして、
フィニッシュ。
人魚の姿のまま這っていって、ビデオカメラを止めＣＤプレーヤーを止める。
撮影は大成功みたいだった。
「やったね、アオレちゃん！」
（やったやった～～！！）
「撮影怖かった？」
（ちょっと怖かったけれど、成功出来る確信あったからね。）
「それより、魚尻尾見てよー。牛のうんこ踏んづけちゃったよ～。」
（私もそれ感じたけれど、”うん”がついて良かったね！）
「アオレちゃんも冗談が上手になったね。そうそう、ダジャレで思いついた！」
（なになに？）
「変身体操！」
（。。。。。）
自分達はランタンを３つ消して１つを手元に置くと、人魚姿のまま座って
夜の月明かりの高原の風景を眺めて楽しんだ。
「へくちっ！！ そろそろ帰ろうか？」
